行進曲「星条旗よ永遠なれ」
 この曲は、スーザの代表作というばかりでなく、世界でもっとも有名な行進曲であり、アメリカでは国歌に次ぐ曲として愛され、様々な場面で演奏されてきた。(1984年、レーガン大統領が法案に署名し、現在ではアメリカの公式マーチに制定されている)
 1896年、ヨーロッパへ演奏旅行中だったスーザ・バンドは、突然マネージャーであるブレークリーが急死したという知らせを受ける。急いでアメリカへ帰る船に乗ったスーザは、これからの仕事のこと、マネージャーの不慮の死への思いなどに心を奪われ甲板を歩いていた。すると、突然!スーザの頭の中のバンドはリズミカルに今まで聴いたことのない曲を演奏し始めたのである。そしてそれは、航海の間ずっと鳴りやむことなく、際立つメロディーを何度も何度も繰り返し演奏し続けたのである。やがてアメリカに上陸したスーザはこの曲を五線紙に書き留め、1896年のクリスマスに書き上げたのである。
 この曲のトリオについてスーザは、「ゆったりとしたメインテーマは北部、有名なピッコロのオブリガードは南部、トロンボーンが奏でる力強いカウンターは西部というアメリカの3つの地域を表している」と言っているが、他にも、「星条旗の……メロディは青い地、ピッコロは星、トロンボーンは赤と白のストライプを表している」とか「メロディは青い空と海、ピッコロは星条旗の周りを翔ぶ小鳥、トロンボーンは力強く進む船を表している」など、色々なことが言われている。その適不適や真偽はともかく、それだけ話題に上るくらい、人々の心を打つ曲であるのは事実であろう。